tom verlaine interviewトム・ヴァーレイン・インタヴュー(2006)

インタヴュー:熊谷朋哉
通訳:バルーチャ・ハシム(HEADZ)
撮影:Stefano Giovannini - stefpix.com

歴史の中のテレヴィジョン

◎テレヴィジョンが出てきた時には、テレヴィジョンは今までのロックとは全く違うものであり、その違い故に、今までのどのロックよりもよりロックに聞こえたと思うんです。例えば抽象表現主義の絵画のように、今までの絵画とは全く違うからこそ新しくなによりも純粋な絵画である、というように。モダン・アートやロックの歴史を見ると、まずは先行する伝統や歴史があり、それに対して抵抗が行われ、それが新たな伝統となるということが繰り返されてきました。それなりに長くなった貴方の活動の歴史のなかで、例えば貴方はパンクと言われたこともあり、ニュー・ウェイヴと呼ばれたこともあり、そして今ではスリル・ジョッキーとともに、ある意味で最先端であり続けていると思います。
一方で貴方はヴァレーズ(Edgard Varese)からESPのフリー・ジャズと言った幅広い音楽の歴史をバックグラウンドに持っている。その視点をベースにした場合、歴史自体の流れと最先端としてのパンクであることの両面とご自身の位置についてはどう考えているんでしょうか?

「それは歴史学者や音楽評論家が決めるべきことだよ。例えばテレヴィジョンがやっていた音楽は、ブルーズ・ベースの音楽ではなかったんだ。70年代にはブルーズ・ロックがまだ多かった。テレヴィジョンはディスコ・ファンクでもなかったし、カントリー・ミュージックでもなかった。77年に出たレコードを見れば、その3つの様式に含まれてないレコードは10枚から20枚いくらいしかなかったんだよ。偶然ながら、そういう作品は大体NYから生まれたものだった」

◎当時のNYには、その様式に入らない新しい音楽を生み出す環境があった?

「70年代中期のNYは周囲の音楽シーンにうんざりしてる人が多く集まっていた。彼らは意識的に変化を起こそうとしてはいなかったかもしれないけど、彼らはラジオを聴いてるような人達ではなかった。今でも僕の友人でアメリカのラジオを聴いてる人は少ないよ。カレッジ・ラジオ局やリスナーがスポンサーしたラジオ局以外、ラジオの殆どは冗談のようなものになってる」

◎パンクと言われたり、ニュー・ウェイヴと呼ばれたこともあったり、そういうレッテルについては?

「ジャーナリストというのは、稼ぐためにとにかく何かを書かないといけないからね。最近の彼らはウェブを見て記事を書いている。最近の記事は明らかにデタラメが書かれたブログを題材にしたものが多いよね。記事が4段もあるレビューになっていても内容が全然ないんだよねえ」

◎パンクは、特に当時は最先端であることも意味していましたが、それについては?

「パンクという言葉は僕にとって全く意味がなかったよ。僕が過去5年間の間で聴いたパンクと呼ばれることもある音楽の中で一番いいのはハードコアでノイジーなものだね。しかも日本のものがいい。サウンドや奏法、アティチュードの面で魅力的だ。例えばボアダムズ。彼らをパンクとは呼べないと思うけれど、彼らの音楽のシンプルさと挑戦的なところが好きだよ」

◎時代が変わって、ロックに対する幻想や情熱がなくなり、異様にマニアックになる傾向と、過ぎ去ったものとしてノスタルジックかつロマンティックに語る傾向の両方があるように思いますが、貴方のロックに対する姿勢に変化はありますか? それは先の質問にもあるとおり、貴方の音楽はロックからの距離ゆえにものすごくロックに聞こえたから、なのですが。

「僕は殆どロックを聴いていないね。僕が音楽を聴く場合は、何かを自分で発見したり、誰かにレコードを奨められたり、CDを人に渡されるときなんだ。その作品が好きじゃない場合は、5分も聴かない。最近聴いてるのはクラシック、ジャズ・ミュージシャンの未発表音源、それに僕があまり詳しくない50年代シンガーの作品だよ。例えば、僕はあまりフランク・シナトラについて詳しくない。でもニューヨークの中古レコード店では、フランク・シナトラの素晴らしいレコードが1ドルくらいで手に入る。昔聞き逃したレコードを聴くことが多いね。だから僕にロック・ミュージックについての質問をされても答えられないな。殆ど聴いてないんだよ」